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2026/04/27 09:17

1日目は、瑞牆山荘から富士見平小屋まで。
歩き始めてしまえばあっという間なのに、ザックを背負って森へ入ると、日常の時間とは別の流れがすぐに始まる。富士見平小屋のテント場は広く、窮屈さがない。その余白も含めて、この場所はいい。急いで次へ向かうためではなく、一度ちゃんと立ち止まるための場所のように思える。
驚くほど早くテント場に着いた。
せっかく時間があるのだから、あとは何もしないことにした。テントを張って、ビールを開けて、座って、ただだらだら過ごす。山に入ると、何かを達成しようという気持ちが前に出やすいけれど、こういう日があってもいい。むしろ、こういう時間こそが山で過ごす贅沢なのかもしれない。風の抜け方を見たり、隣のテントの気配をぼんやり感じたり、木のあいだから変わっていく光を眺めたり。特別なことは何も起きないのに、時間だけがちゃんと濃くなる。
お腹が空いたころに、YUKIHIRA POT MINIで袋麺を作った。
山で食べるものは、凝っていなくてもいい。簡単で、温かくて、ちゃんとおいしければ十分だと思う。湯気の立つ鍋を前にして、外で食べる麺はそれだけで少し特別になる。家で食べればすぐに終わってしまうようなものでも、山では妙に記憶に残る。そういう小さなことの積み重ねで、一日はできている。
2日目は、富士見平小屋から金峰山山頂へ向かった。金峰山へ向かう道は、森の中をじわじわと進みながら、少しずつ景色の質が変わっていくのがいい。
最初は樹林帯の中の静かな道でも、標高を上げるにつれて岩の存在感が増し、視界がひらけ、山の輪郭がはっきりしてくる。
山頂付近には、まだ雪が残っていた。場所によっては凍っているところもある。
晴れていても、春になりきってはいない。
明るい光の下に、まだ冬の名残が静かに残っていた。ときどき、強い風が吹く。歩いているあいだはいいけれど、立ち止まると急に寒い。
大きな花崗岩。森の影。冷たい風。晴れているのに、どこかまだひんやりとした空気。派手な山行ではなかったけれど、こういう二日間はあとからじわじわ残る。
ビールを飲みながら過ごした夕方、YUKIHIRA POT MINIで作った袋麺、暗くなってから聞こえたフクロウの声、山頂近くに残っていた。雪、全部まとめて金峰山だった。
山ではつい、どこまで行ったとか、何を見たとか、そういうことを先に話したくなる。
でも今回の金峰山は、それよりも、どう過ごしたかのほうが強く残っている。
早く着いて、だらだらして、温かいものを食べて、暗くなる前に寝て、朝また歩き出す。
やっていることだけ並べると、ずいぶん地味だ。
でも、その地味さが妙によかった。無理に予定を詰め込まなくても、一日の流れが自然にできていく。山の中では、そのくらいのほうが落ち着く。
山頂に着いたことより、そこへ向かうまでの空気とか、立ち止まった場所の感じとか、そういうもののほうが残っている。
大きな花崗岩の気配、森の影、少し冷たい風。金峰山の記憶は、はっきりした出来事というより、そういう細かい感覚の集まりとして残っている。
たぶんまた時間が経っても思い出すのは、山頂のことだけじゃない。早く着いた午後のテント場の感じとか、暗くなる前の静けさとか朝の空気とか、そういうものだと思う。
静かなまま、でも案外長く残る。金峰山はそういう二日間だった。