2026/09/05 10:15
自分が考えた製品を作って、それを身につけて、気の置けない仲間と山へ出かける。実際に歩いて、使って、汗をかいて、疲れて、笑って、その時間をきちんと写真に残す。僕はこの一連が好きです。
製品を作って販売している以上、きちんと売上をつくり、利益を出し、ブランドを続けていかなければならないのでお金を稼ぐことは大事です。でもそれだけだったら、たぶん僕はここまで続けてこられなかったと思います。

新しい製品を考える。生地を触る。サンプルを着る。少しずつ形を変える。出来上がったものを山へ持っていく。仲間がそれを着て歩いている姿を見る。そして写真を撮る。僕の中では、その全部が繋がっています。

ものを作ることも、山へ行くことも、写真を撮ることも、僕にとっては自分が考えていることを表現するための手段です。

僕は動画を撮ることができません。動画については、信頼している仲間にお願いしています。だから僕自身は写真を撮ります。できる限り、自分で撮りたいと思っています。

もちろん自分には撮れない写真があることも、僕より上手に表現できる人がいる事もよく分かっています。それでも、自分が考えた製品をどんな場所で使ってほしいのか。どんな光の中にあってほしいのか。どんな人が、どんなふうに歩いている姿を想像しているのか。そういうものは、なるべく自分の目を通して残したい。

山の中で仲間がその製品を身につけて歩いている姿を見たとき、「ああ、こういう景色の中にあってほしかったんだ…」と思う瞬間があります。机の上では頭の中にしかなかったものが、山の中で誰かの身体に馴染んでいる。

歩いている。汗をかいている。風に吹かれている。休憩している。くだらない話をして笑っている。そういう姿を見ると、製品がようやく完成したような気持ちになります。

僕にとってものづくりは、少し文章を書くことに似ています。文章なら言葉を選ぶところを、生地を選び、形を選び、色を選び、パーツを選ぶ。「これは本当に必要なのか」「もっと削れないか」「それでも安心して使えるか」「山だけのものになっていないか」「日常でも自然に手が伸びるか」。そんなことを何度も考えながら、一つの形にしていきます。

RIDGE MOUNTAIN GEARは、そもそも「RIDGE」という個人の登山ブログから始まりました。山へ行って感じたこと。使ってよかった道具のこと。歩いた道のこと。そこで考えたこと。誰かに頼まれたわけでもなく、仕事でもなく、ただ自分が面白いと思ったことを誰かに伝えたくて、文章と写真にしていました。

考えてみれば、今やっていることもあまり変わっていません。昔は文章と写真だった。今はそこに、製品という表現方法が加わった。自分が考えたことを製品にする。それを山へ持っていく。写真を撮る。文章を書く。そして誰かに伝える。

小さい会社になって、スタッフがいて、工場があって、取引先がいて、お客様がいる。背負うものは当然増えました。売上も原価も在庫も納期も考えなければならない。趣味のブログだった頃のように、好きなことだけを好きなようにやることはできません。

それでも、その中心にあるものだけは変えたく無いと思っています。自分が作りたいと思えるものを作ること。自分が使いたいと思えるものを作ること。それを持って山へ行きたいと思えること。仲間が使っている姿を見て、思わず写真を撮りたくなること。そして、「これを作って良かったな…」と自分自身が思えること。
だから僕にとって撮影は、単なる商品撮影ではありません。その日どんな天気だったのか。どんな空気だったのか。誰と歩いたのか。どんな顔で笑っていたのか。製品の向こう側にある時間まで残したい。
数年後に写真を見返したときに、「あのとき、みんなであの山へ行ったな」と思えるような写真であってほしい。商品写真でありながら、自分たちの記録でもある。

僕は、ブランドを運営しているというより、ずっと大きなブログを書き続けているのかもしれません。服を作り、道具を作り、山を歩き、写真を撮り、文章を書く。その全部を使って、自分が感じたことを外へ出していく。
RIDGE MOUNTAIN GEARは、今でもあの当時の「RIDGE」というブログの延長線上にあります。見た目は随分変わったけれど、根っこにあるものはあまり変わっていません。
自分が山で感じたことを、自分なりの方法で誰かに伝える。
そしてこれからも、その延長線の先を歩いていくのだと思います。


