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2026/07/25 11:21

山梨県北杜市。
八ヶ岳の裾野にある、ikkakumosaic.さんのアトリエを訪ねました。
深く焼かれた板壁の小さなアトリエ。扉を開けると、木の匂いと削り屑、使い込まれた道具、そして制作途中の小さな山々が静かに並んでいました。

僕は以前からikkakumosaic.さんの作品が好きで、気になるものに出会うたび、ひとつずつ手元に迎えてきました。RIDGE MOUNTAIN GEARのアトリエにも、いくつかの作品をきちんと飾っています。少し大きな作品は、井出さんがわざわざ納品しに来てくれます。
だから、小さくても景色がある。

机の上の十数センチほどの木片を眺めているだけなのに、かつて歩いた稜線の風や、足元の石の感触を思い出すことがあります。

均一ではない稜線。深さの違う彫り跡。木の節や色の濃淡。
それらは消すべきものではなく、作品が生まれるまでに通ってきた時間そのものです。
滑らかに整えすぎず、自然が持つ揺らぎを無理に均さない。素材に耳を澄ませ、必要なところまで手を入れ、そこで止める。

僕は、その距離感に惹かれているのだと思います。

アトリエでは、ひとつの作品が生まれていく工程も見せてもらいました。

木を選び、形を切り出し、刃物を入れる。少し削っては眺め、また削る。素材と対話をしながら、進む方向を探していく。

その姿を見ていると、ものをつくることは、山を歩くことによく似ていると思いました。

歩くことは、ただ目的地へ向かうことではありません。足元を確かめ、地形を読み、時には立ち止まり、引き返す。

一歩進んだからこそ、次の一歩が見えてくる。ものづくりも、仕事も、山歩きも、きっと同じです。
早く辿り着くことだけが正しいわけではなく、誰かと同じ速度で歩く必要もない。うまくいかない日も、遠回りをする時間も、その人の道の一部です。

歩いてきた時間は目には見えませんが、やがて、つくられたものの中に静かに残っていきます。
昼になり、いったん手を止めて、アトリエからほど近いCAMILOTAへ向かいました。
森の中に佇む、タイニーハウスを使ったコーヒーと焼き菓子の店。上月太郎さんとミカさんご夫妻が営んでいます。
僕たちはマフィンとアイスコーヒーを注文し、少し休憩しました。
甘いものを食べ、冷たいコーヒーを飲み、少し話す。こういう何でもない時間が、思っている以上に大切なのだと思います。

ものをつくる仕事をしていると、いつの間にか、完成させることや次へ進むことばかりを考えてしまいます。
けれど、歩き続けるためには、立ち止まる場所も必要です。

山の途中で荷物を下ろし、水を飲み、風に吹かれる時間も、歩くことの一部です。ここまで来た道を振り返り、この先を考える。
小さなアトリエで木を削ること。
森の中の小さな店でコーヒーを淹れること。
誰かが使うものを、ひとつずつ考えながらつくること。

規模は違っても、その根にあるものはよく似ています。

自分たちが本当に必要だと思うものを、手の届く範囲で、丁寧につくり続ける。

大きな声で語らなくても、その人の考え方は、つくられたものや空間の端々に現れます。

それは、言葉だけでは伝えきれないものです。