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2026/01/23 17:45

テント場や山小屋に着いた瞬間、僕の中でいちばん最初にやりたいことがある。

それは、今日一日を一緒に歩いてくれた服を脱いで、きちんと深呼吸できるものに着替えること。
汗を吸って、風を受けて、ザックに押されて、岩や木に擦れて。
行動中のウェアは頼もしいけれど、身体の緊張までずっと引き受けたままになりがち。もちろんそれは山での安全に直結するし、必要なことでもある。でも、テン場や山小屋の中でまで、その緊張を着続けたくはない。僕はそこでいったん解きたい。
肌に直接触れるインナーは、やっぱりウールが一番好き。温度がやさしくて、汗を受け止めても冷えにくい。乾き切らない夜でも、どこか安心感がある。ウールは、暖かさだけじゃなく、着ている人の気持ちまで落ち着かせてくれる素材だとつくづく思う。
「山で眠る」って、特別でとても繊細な事だ。環境も音も匂いも、いつもと違う。だからこそ肌が触れるものだけはリラックス出来るものが良い。
僕はタイツを多用する。軽いし、暖かいし、荷物にもならない。
ただ、タイツにはひとつだけ悩みがあった。ピッタリタイトなシルエットだと、機能としては完璧なのに、テン場や山小屋で一枚になった瞬間、急に居心地の悪さが出てくることがある。
丁度タイツ一枚で過ごせる気温の時にもショーツやパンツを上から履かないと行動しずらい。
水を汲みに行く。トイレに行く。歯を磨きに外へ出る。隣の人に「すみません」と言って通り抜ける。
そういう小さな動きのたびに、一枚でいることがやっぱり恥ずかしい。
だからこんな寝巻きが欲しかった。インナーとしての気持ちよさを持ちながら、一枚でテン場や山小屋の中をうろうろしても気にならないリラックスウェア。
寝るためだけのものじゃなくて、休む時間をきちんと補えるもの。行動着でもなく、部屋着でもなく、その中間にある、山のための寝巻き。
ウエストは長くした。腹巻の役割も持たせたかった。夜の冷え込みはじわじわ来る。特にお腹が冷えると、途端に全体がしんどくなる。
薄いのに、守られている感じ。布が一枚増えるだけで、眠りの質が変わることがある。
ポケットも付けた。収納というよりハンドウォーマーのような役割。冷えた指先を入れて少しだけ温める。あるいは、ただ手を突っ込んで立っていられる。山ではこういう手の居場所が、気持ちの居場所にもなる。
そしてこのウェアの核になっているのがホールガーメント。縫い目やリンキングの縫い代がない。肌に当たる余計な段差がない。
インナーは、ほんのわずかな違和感が積み重なると、夜の静けさの中で急に大きく聞こえてくる。タグが当たる、縫い代が擦れる、膝裏に引っかかる。そういう小さなノイズを、できる限り消したかった。ホールガーメントの滑らかさは、着た瞬間にわかる。これは機能というより、体験だと思う。
このパンツは、インナーであり、アウターでもある。身体に寄り添いながらも一枚で過ごせる。寒ければその上からシェルパンツやダウンパンツを重ねれば良いし、暖かければこれ一枚でテント場の外に出ても良い。
「こう着なきゃいけない」をつくらず、状況に合わせて自然に選べる。その自由さこそ山でいちばん強い。
名前はまだ決めきれないけれど目指したものははっきりしている。山で休む時間をきちんと整える。
今日の疲れを静かに解いて明日の身体を戻す。そのために、わざわざ持っていきたくなる一本を目指しました。