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2025/12/22 09:50

2月初旬、いつものメンバーで屋久島への撮影兼慰安旅行。仕事の延長線上にきちんと旅を置いて、でも旅の側にもきちんと寄りかかる。そんなバランスの時間にしたかった。1日目はお昼頃に屋久島空港に着いた。12月なのに半袖でも良さそうな気温だった。その日はみんなでヴィラに泊まり地元の居酒屋さんで地元でしか出回らない美味しいお魚と美味しいお酒を愉しんだ。
2日目の朝に山へ出発。歩いたのは白谷雲水峡から新高塚小屋までのルート。
歩きはじめは朝6時くらいだったけれどまだ陽が上がらない。ヘッドランプをつけて、足元だけを照らしながら森に入っていく。ヘッドランプの光の円の外側は見えないのに、樹々の気配だけが濃い、空間が大きい。なんだかいつもの山と違う…そう感じる。
少しずつ明るくなってくると、屋久島の森のスケールがはっきりしてくる。
目にする樹々が大きすぎる。幹も枝も苔の層も、根のうねりも、こちらの感覚の普通追い越してくる。撮影しようと構えるけれどどうしてもフレームに収まりきらない…
広角にすると今度は圧が薄まってしまって、そこに立っている感じが逃げていく。「屋久島に来たらいい写真撮れるだろうな♪」なんて期待していたけれど序盤でその期待は薄らいだ。それほど難しい。
そんなこんなで縄文杉までは、スタートからだいたい5〜6時間。
長いようで、歩いていると短い。暗い森から、明るい森へ。足元の濡れた感触を繰り返し確かめながら、淡々と前に進む。いつものメンバーで歩くと、言葉が少なくても進めるのが良い。各自がそれぞれのペースで淡々とやるべきことをやって、必要なときだけ短く確認する。仕事の段取りに似ているのに、気分はまるで違う。みんな同じ方向を向いているだけで、心が少し軽くなるし安心出来る。
縄文杉に着く頃から、霧が濃くなってきた。遠くの景色は白くかすみ、見える範囲がぐっと短くなる。空気の湿り気や匂いを感じる。
縄文杉はたしかに大きくて、存在感もある。でも、そこに着くまでの道のりでずっと樹々に圧倒されていた。だから正直、目の前に現れたときの感想は「あ、これが。確かに…」くらいで、驚きというより確認に近かった。
さらに進むと、雹だかみぞれだかが激しく降りはじめた。最初は雨だと思った。でもフードに当たる音が乾いていて、グローブの上には結晶が残った。少しすると雨も混ざる。風も強くなってきた。

びしょびしょになりながら、この日の目的地の新高塚小屋に到着した。
小屋に入った瞬間、カビの匂いが強く鼻を刺す。壁はところどころ白く変色していて、たぶん全部カビなんだろう。外は曇っていたけれど、それだけじゃなくて、日当たりが悪いのも大きいんだろうな、とか。濡れたまま立ったまま、そんなことをぼんやり考えていた。