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2025/08/18 15:34

前回に続き、今回もテーマは“岩”。
舞台は中央アルプス。ずっと地図にしるしを付けていた、とある岩に会いに行く山旅です。

その岩に辿り着くまでの時間ごと味わいたくて、あえて遠回りのルートを選びました。
花崗岩のザラつき、風が運ぶ冷たい匂い、靴底に伝わる細かな振動。そんな手触りを楽しむ、静かで贅沢な歩き方。

同行するのは友人であり、RIDGE MOUNTAIN GEARのメインモデルでもあるOJくん。
前夜は檜尾小屋でテント泊。日が昇りはじめた空を背に空木岳へ向けて歩き出します。

途中、木曽殿山荘の手前から勾配がグッと増すあの区間。山荘で少し休憩して
「山頂で待ち合わせしよう!」とOJくんに声を掛けると、彼はひょいひょいとリズム良く前へ。あっという間に姿が見えなくなる。僕は息を整えながら、岩にピントを合わせゆっくりマイペースで高度を稼ぐ。
途中、雷鳥の親子に遭遇。道端の岩陰をコロコロと移動する雛たちに、足が自然と止まる。この山域の時間は、やっぱり優しい。

やがてピークに上がり、肩の力がふっと抜ける。見渡せば、ここら一帯の岩がどれも見事だった。アルパカのような、カタツムリのような岩。
ストーンヘンジを思わせる岩門。
そして、どっしり腰を下ろした巨大なカピバラみたいな岩まで。
まるで彫刻庭園を歩いているみたいで鑑賞モードに入ってしまう。
「どうしてこの形になったんだろう?」と想像を膨らませながら、角度を変え、距離を変え、光を変えて眺める。
遠回りしてきた理由は、たぶんこれだ。

目的の岩までは、もう少し。
足取りは軽いのに、心はゆっくり。
今日の主役は山頂でも絶景でも無い。
その続きに、これから会いに行く。

続く...