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2025/04/04 17:34

アパレルやアウトドア業界では、大手メーカーやブランドを含めて、春夏・秋冬という年に2回の展示会に向けて製品を準備し、その場で取引先から受注をとることが一般的です。

RIDGE MOUNTAIN GEARでは、そのスタイルを選びませんでした。

もちろん、僕たちの規模がまだ小さく、現実的に展示会を開くことが難しいという側面もあります。ですが、本当の理由は別のところにあります。

僕は長い間アパレルメーカーに勤務していました。そこでは多い時には2ヶ月に1回もの頻度で展示会を開催し、取引先に新しいデザインや素材、カラーを提案し続けていました。展示会とは、メーカーにとってそのシーズンの成果を発表する場であり、同時に「次の売上」を生み出すための重要な営業戦略の場でもありました。

展示会を頻繁に開催するということは、「常に新しい何か」を求め続けることを意味します。「前回とは違うもの」「市場で話題になるもの」を常に探し続け、試行錯誤を繰り返します。それは商売の本質かもしれませんが、その繰り返しの中で、自分たちが本当に作りたいものなのか、それとも単に「売る」ために作っているのか、その境界線がどんどん曖昧になっていきました。

次の展示会が終わればすぐに次。そのスピード感に追われながら、僕自身も次第に疑問を持つようになりました。「これは本当に自分が作りたいものなのか?」「お客さんにとって本当に必要なものなのだろうか?」そんな問いが頭から離れなくなっていました。

僕は、「作りたいときに、作りたいものを、自分のペースで作る」ことを望むようになりました。まるで著名な陶芸家のような贅沢な話に聞こえるかもしれませんが、これは素直な僕の気持ちです。

少なくとも、当時の自分にとっては、展示会という締め切りがある事で、どうしても時間が足りなくなっていました。生地メーカーさんや縫製工場さんに無理なお願いをして、生産ラインの隙間にねじ込んでもらうことが頻繁に起こります。当然、事故やミスも起きやすくなり、最終的にはお客様にも迷惑がかかってしまうことがあります。

僕は、そういう誰も安心できないものづくりが嫌です。

関わってくれるすべての人が無理なく取り組めて、自信を持って「これは大丈夫」と言える安心出来るものを届けたいと思います。

そのためにも、僕たちは焦らず、慌てず、自分たちのペースを守りながら、本当に納得のいく製品づくりを続けていきたいです。

取り扱ってくださる店舗様にとっては、展示会が無いということは不便かもしれません。そのため、なるべく分かりやすく、伝わる製品ページを構築することを常に心がけています。また、それとは別に僕たちの思いが伝わる新たな手段を現在構築中です。

これからも、僕たち自身が心から良いと思えるものを、丁寧に届けていきます。

もちろん、展示会というスタイルにも大きな意義や可能性があることは、これまでの経験からもよくわかっています。ただ、僕たちはあえて別のリズムで、ものづくりを続けていきたいと思っているのです。

新年度ということもあってか、こんな事を書きたくなりました。